製造業の採用難は「動画」で突破する！現場のリアルを伝えミスマッチを防ぐ活用事例

2025年12月25日

製造業における採用難は、少子高齢化や若手人材の敬遠といった社会的要因だけでなく、現場の仕事内容が外部から見えにくいという業界特有の課題が大きく影響しています。高度な技術やモノづくりの魅力が豊富に存在してはいますが、実際の現場の様子がブラックボックス化しており、応募者にとっては不安や誤解が生まれやすいのです。

このような課題を解決する手段として、近年注目されているのが「動画」を活用した採用活動です。現場の映像や社員の声をリアルに伝えることで、企業の魅力を直感的に感じてもらいやすくなり、早期のミスマッチ防止にもつながります。

本記事では、製造業の採用課題をひもときながら、動画活用の具体的なメリットや成功事例をご紹介し、現場の魅力を伝える新しい採用の形について探っていきます。

製造業の採用課題「現場のブラックボックス化」と動画のメリット

若手が不安視する「見えない現場」と3Kイメージの払拭

製造業では、若年層の就業者数が2002年から約20年間で約121万人減少しています（参照*1）。この背景には「3K（きつい・危険・厳しい）」といった先入観が根強く、若手人材が製造業を敬遠しやすい傾向があります。こうしたイメージは、実際の職場や働き方を知らないことから生まれることが多く、現場の実態が伝わっていないことが課題となっています。

実務に興味があっても、「暗い雰囲気ではないか」「未経験でも丁寧に教えてもらえるのか」といった疑問が解消されないまま、応募をためらうケースも少なくありません。ここで効果を発揮するのが動画です。視覚と音声で職場の雰囲気や現場の空気感を直接届けられる動画は、求職者の不安を安心感へと変える、心強い味方になってくれます。例えば、ヤンマーが公開している現場や技術の紹介動画（参照*2）を視聴することで、就活生は製造業の革新性や働きがいを具体的にイメージしやすくなります。

文字情報の5,000倍！動画で伝える「技術のかっこよさ」と「職場の空気」

動画は文字情報よりも圧倒的に多くの情報を短時間で伝えることができ、記憶にも残りやすいといわれています。実際、採用動画を活用している企業の応募率は、未活用の企業と比べて約2.7倍に達するというデータもあります（参照*3）。現場スタッフの表情やチームワーク、機械を操作する様子などをライブ感たっぷりに伝えることで、学生や求職者に「この先輩たちと働きたい」と思ってもらえる可能性が高まります。

例えば、コマツの現場紹介映像（参照*4）では、世界を舞台にしたダイナミックなものづくりの様子が一目で伝わります。こうした専門的な技術力や仕事のやりがいを視覚的に提示することで、言葉だけでは伝わりきらない自社の強みを深く理解してもらえるようになります。

ミスマッチを防ぎ、内定辞退を減らす「リアルの可視化」

製造業に限らず、採用活動で懸念されるのが入社前後のミスマッチです。特にZ世代は、勤務地や仕事内容の確約を重視し、親の同意も重要な決め手となる傾向があります（参照*5）。業務内容や職場環境を動画で具体的に伝えることで、応募段階から「自分に合いそう」「親にも納得してもらえそう」と感じてもらいやすくなります。

さらに、動画活用は採用時だけでなく入社後のスムーズな定着を助ける教育ツールとしても力を発揮します。熟練スタッフの技術を映像化してデータベース化しておけば、技術継承の効率化にもつながります。DX（デジタルトランスフォーメーション）と連携し、ノウハウをデータベース化することで、教育コストや技術伝承の効率化にもつながります（参照*6）。

Z世代・スマホ世代に響く！採用動画のトレンドと成功事例

タイパ重視の「ショート動画」と没入感のある「オンライン工場見学」

Z世代はショート動画アプリを日常的に使い、30秒から60秒程度の短い映像コンテンツに情報を集約することが当たり前になっています（参照*7）。このスタイルに合わせて製造業が採用情報を発信すれば、就活生の「タイパ（時間対効果）」を満たしつつ、企業の魅力を効果的に伝えられます。ロボットアームが動く瞬間や、マシンを操作する先輩社員の一言など、興味を引く場面を短尺でつなぐ方法が注目されています。

また、“オンライン工場見学”と題した臨場感のある動画も、コストを抑えながら若手の関心を集めやすい取り組みです。工場や生産ラインを撮影してバーチャルツアーを公開する企業が増えており、Z世代の学生は遠方からでもスマートフォン一つで職場の詳細を知ることができます。没入感の高い動画ほど、働くイメージをリアルに描けるため、実際に足を運ばなくても就業意欲を高めやすくなります。

求人応募数アップや若手採用につながった動画活用例

製造業の人材派遣を手がける日総工産株式会社は、内定者メッセージ動画や会社紹介映像を年間400本以上制作し、新卒・派遣採用の両面で着実な応募増を実現しています（参照*8）。動画制作を内製化することでコストを抑えつつ、豊富なコンテンツを継続的に発信できるようになった好例です。

また、松文産業株式会社では、高品質な会社紹介動画と位置情報による広告配信を組み合わせることで、採用成果を大きく伸ばしています（参照*9）。工場の最新設備や働く風景を動画で伝えたことで、工場見学やエントリー数の増加につながった事例です。

現場の雰囲気をありのままに伝え、定着率を高めた例

産業用資材商社のシバタ（参照*10）では、企業理念や先輩社員の姿を丁寧に紹介し、若手の活躍をビジュアルで示す動画を採用活動に活用しています。学生にとっては“どんな会社なのか”が直感的に分かり、安心感を持てる材料となります。こうした取り組みが功を奏し、入社後の定着率向上にも寄与しています。

社員インタビューを通じて一日の様子を映す動画は、特に信頼を得やすい手法です。きれいに作り込みすぎない“普段の職場風景”が親しみを生み、「自分もここで働けそうだ」と感じる学生が増えています（参照*3）。その結果、早期離職の減少やチームへの定着が期待できます。

低コストで効果を出す！失敗しない採用動画制作の始め方

プロに頼む？スマホで撮る？予算と目的に合わせた制作手段

採用動画を制作する際は、予算と目的のバランスを考えることが大切です。大掛かりな撮影機材やプロのクリエイターを起用すれば高品質な映像が期待できますが、コストが大きくなりがちです。一方、近年のスマートフォンは撮影性能が向上しており、小規模な企業でも内製化で十分に見栄えのする動画を作成できます（参照*11）。

動画制作の基本的な流れは、目的とターゲットの設定→企画・シナリオ作成→撮影→編集→配信→効果測定→改善というサイクルを回すことです（参照*12）。自社で手が回らない部分だけ外注する方法も有効です。例えば撮影は自社で行い編集のみプロに依頼するといった工夫をすることで、予算を抑えつつクオリティの高い動画を賢く制作できます。

現場社員の協力を得て「飾らないリアル」を切り取るコツ

製造現場の風景を撮影する際は、特別な演出を加えず“日常”をそのまま記録することがポイントです。社員が普段通りに作業している様子や、気さくな会話、休憩時間の雰囲気などを映すだけでも、現場の実像が伝わりやすくなります（参照*3）。

また、社内で動画制作を進める場合は、撮影担当者と出演者の認識を揃えることが重要です。社内共有ツールやチャットを活用し、撮影の目的や使用場所を明確にしておくとスムーズに進行しやすくなります。たとえば、熟練技術者がAES※を扱う緻密な場面など、プロのこだわりを感じさせるシーンは技術力の高さを伝える絶好の素材となります。こうした現場協力による動画は、社内教育にも効果を発揮します。

※AES：アコースティック・エミッション・センサーの略。異音から異常を察知するセンサー

まずはここから！母集団形成のための動画活用チャネル

採用動画の配信先としては、YouTubeやSNS、自社ホームページなどが代表的です。特に自社サイトのトップや採用ページに埋め込むことで、24時間情報を発信し続ける“営業採用ツール”として機能します（参照*13）。商談やイベント時にも動画を活用することで、低コストで認知度を上げられる点は大きなメリットです。

さらに、オンライン合同説明会やウェビナーでも動画は活躍します。数分の映像で企業理解を促し、興味を高めたうえで詳しい質問につなげる流れが作れます。こうした手法とDX施策を組み合わせることで、人材不足や応募数減少といった製造業の課題を包括的に解決し、応募者の質や内定後の定着率も高める効果が期待できます（参照*6）。

おわりに

製造業の採用活動は、「現場が見えない」「業務内容がイメージしづらい」といった理由で敬遠されやすく、不確実さへの不安が課題となっています。こうした状況を動画で打破するアプローチは、今や多くの企業で一般的になりつつあります。デジタル技術を取り入れ、ジオターゲティング広告やSNSなどのチャネルと組み合わせることで、応募者の母集団形成から内定後の離職防止まで製造業の皆さまが抱えるお悩みを幅広く解決できる可能性が広がります。

動画には、製造業の奥深さや仕事の魅力を“一目で”伝える力があります。まずは短い映像から一歩踏み出してみませんか。現場の温かな声を届けることが、未来の仲間が安心して扉を叩くきっかけになるはずです。

監修者

小池正也（こいけまさや）

Yahoo! JAPANの広告代理店にてWEB広告の運用に携わる。2009年、茨城県での事業立ち上げを機にUターンし、地域に根ざしたWEBマーケティング支援をスタート。これまで300以上の企業や店舗のWEB広告に携わる中で、広告を出すだけでは成果につながらないという課題を実感。
現在はWEBマーケティング全般に携わり、企業の魅力を引き出すWEBサイト制作や、Google広告・Yahoo広告・DSP広告・SNS広告などの運用、Googleアナリティクスを活用したアクセス解析を行う。現場での経験を活かした、改善提案を行っている。

出典